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慣れない街をぶらぶらと歩きながら、千明は側を歩く女子高生たちの中にふと見知った姿を見つけ、口角を上げた。気づかれないように気配を消してそっと近づき、「よっ!」と声を掛ける。すると友人たちとの会話に夢中になっていた彼女は突然のことに「わぁ!」と声をあげて飛びのき、そしてこちらを確認して、もう一度驚いた。
「千明!?」
目を見開く女子高生――ことはに、千明は「よっしゃ」と小さくガッツポーズをする。
「なんで、ここに!?来るなら先に連絡くれはったらよかったのに」
「いやぁ、学年末試験終わって突然思いついてさー。さっき家に連絡したら今ごろ下校時刻だっていうから、ここでブラブラしてたわけよ」
まくしたてることはに千明はさらっと答えると、「大学ってとこは、結構暇なんだよなー」と自慢気に言ってのけた。
一緒にいた友人たちは突然のことに驚いていたが、千明がことはの知り合いだとわかるや否や、誰だ誰だと騒ぎ始める。
返答に困っていることはの代わりに「ことはが東京にいたときの仲間、かな?」と千明が適当に答えると、友人たちはきゃあきゃあと黄色い声をあげた。真面目なことはからは、千明のどちらかというと軽い雰囲気は想像つかなかったのだろう。
そんな友人たちの様子にますます困り顔をする彼女の様子を認めた千明は、ことはの腕をつかむと「オレさー、腹減ってるんだよね。なんかうまいもん食わせてよ」その場から連れ出した。
故郷に戻ったことはが高校に通っているというのは話には聞いていたが、実際に目にするセーラー服姿のことはは想像していたよりもはるかにかわいかった。一度外道衆退治のためにと高校に潜入したときのブレザー姿も似合っていたが、やはり借り物ではなく自分の制服だと馴染むのだろう、そのかわいさはまた格別だ。
千明は思わず緩む口元を必死でごまかすと、ことはが選んだ赴きのある和菓子店のわらび餅にかぶりつく。
「高校生活はどうだ?」
質問したい気持ちと驚きとが入り交じって未だ混乱していることはに兄ぶって質問してやると、彼女は少し考えて逆に質問で返してきた。
「大学は、どんな感じなん?」
「大学?そりゃ勉強はそこそこ大変だけどさ、高校以上に自由があるって言うか、好きなことできんじゃん?勉強だって高校のときみたいに詰め込みじゃねーし、結構楽しいぜ」
それを聞いたことはは、先ほどよりさらに考え込んでしまった。
「どうしたんだ?」
先ほどの級友たちと楽しそうに話していることはとはずいぶんと様子が違うことに、また無理をしているのではないかと千明は心配が募る。
「うちな、進路悩んでるねん」
しばらくの間のあと、ことはは俯きながら言葉を発した。無理、というのとはまた違うらしい。
「お姉ちゃんの具合がだいぶ良くなって家業は継げそうだから進学しろ、って親はいうんやけど、うち、進学なんてピンとこなくて」
つい先年までことはの夢は、シンケンジャーになることだった。それが達成して、さらにそのシンケンジャーの仕事すら全うした今、彼女が将来に悩むのも無理はない。
もちろん千明だってそんな大層な夢を持って大学に行こうとしたわけではなかった。それでも大学まで進学することは自身の中では当たり前のことだったし、今も何の疑問ももたずに通っている。
「うち、あんまり頭良くないし、大学は行けそうもないし…。でも専門学校だと、どこ行っていいかわからんくて」
なるほどね、と千明は呟いた。
「まぁ、オレだってあんまり深く考えて大学進学決めたわけじゃねーけどさ」
考えながら、少しずつ言葉を紡いでいく。
「結局、将来何やりたいか、わかんねーんだろ?」
「うん、そう。竹細工やってて、それでいつかシンケンジャーになるんやって思ってたから」
「だったらさ」
そこで、千明は一度話を止めた。昔の自分だったら、このまま話を押し進めていたに違いない。
しかしシンケンジャーとして外道衆との闘いで培った経験は、千明に責任感というものを与えていた。
好意をよせる女の子が悩んでいるのを見るのは辛い。とはいえ、いくら親切心からといっても(もっとも下心も少しあるが)、今から自分がしようとしている提案には彼女の人生がかかっている。下手をすれば、彼女の行く先を悪い方向に向かわせてしまうかもしれない。
だが、自分は今、相談されている立場にあった。少しでも選択肢は多い方がいい……はずだ。
千明は一度深呼吸すると、もう一度自分の中で仕切りなおす。
「だったら、大学か短大に進学して、それから進路考えてもいいんじゃねぇの?」
大学と言えども、ピンキリだ。少なくともことはほど真面目であれば、おそらく入れる大学などいくらでもあるだろう。
「オレだってそんなに成績良くねーけど大学入れたし、それにマジメに進路考えるのはこれからだぜ?」
そう言い切ってはみたもののやはり心配で目の前の様子を伺うと、ぱっと明るい笑顔になったことはがいた。千明はホッと胸をなでおろす。ここから先はノリで押し切るしかない。
「例えばさ、東京の学校受けるのも良くね?」
「東京?」
ことはがピンとこないような顔で首をかしげる。
「そ。東京は大学も多いし、選択肢多いぜ。みんなもいるしさ」
「東京かぁ」
目を輝かせることはに、千明はさりげなく続ける。
「下宿だったらさ、例えばうちなんか親父とオレと男二人だし、女の子いたらいろいろ助かるし、いくらでも歓迎するぜ?」
「そんなん悪いわぁ。志葉のお屋敷なんか部屋も多いし、下宿させてもらえんかなぁ?」
自分の提案など端からスルーですっかり志葉家に下宿するつもりでいることはに、千明はがっくりと肩を落とす。だが、東京にさえ来てくればチャンスは今よりもっと増えるだろう。千明は持ち前の楽天的思考で気を取り直した。
「ま、それは合格してからだ。まずは情報集めと勉強あるのみ!」
らしくない千明の発言に、ことははぷっと吹き出した。
「でも、ありがとう。うち、頑張ってみるわ」
悩みなどすっかり吹き飛んだような彼女の表情に、千明は明るい未来を想像していた。
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最終幕から2年半後くらい…かな?
千明一浪大学生、ことは二浪高校生です。大検も考えたけどね、やっぱ高校生で。
うまくいけば1年間同じ大学に通えるかも?ってな千明の野望(笑)