忍者ブログ


[17]  [15]  [14]  [13]  [12]  [11]  [8]  [7]  [5]  [4]  [2
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「茉子ちゃんみたいな女(ひと)になりたいなぁ…」
 ことはがそうこぼしたのは、源太の寿司屋台で一人お茶を飲んでいたときのことだった。ことははときどき源太のところに寿司の受け取りに一人で訪れる。源太の屋台はあまり一人で出かけることのないことはの、数少ない出かけ先だった。
 たまたまその日は作業が手間取ったため、依頼されていた寿司はまだできあがっていなかった。そこで、ことはにお茶を飲みながら待ってもらうことになったのである。
「茉子ちゃんみたいな、って例えばどんなんだ?」
 突然発せられた呟きに、どう返事をしたものかと源太は質問で返す。
「そやなぁ、きれいで、おねえさんっぽくて、いつも落ち着いてて……あ、あとみんなのことよくわかってるのはすごいなぁと思う」
確かに茉子は美人でなんでもソツなくこなすようなどちらかというと姐御タイプ、ことはのような年少の女性からは憧れの存在になるのかもしれない。だがタイプは違えど、ことは自身も魅力のある女性だと源太は思う。
「そう言うけど、ことはちゃんだって充分魅力的だと思うぜ」
「そやけど、うち、なにやってもダメダメやもん。茉子ちゃんみたいにお料理もでけへんし」
 なるほど、と源太は思った。結局のところ、ないものねだりなのだ。それはかつての自分が自分とはまったくタイプの異なる丈瑠に、仲間意識と同時に憧れも抱いていたのと同じだろう。いつか仲間になると同時に追いついてやろうという気持ちが、一人修行を続けてこられた所以なのである。
 源太はふっと笑った。シンケンジャーとして立派に戦っていても彼女はまだまだ17歳、大人とは言いきれない年なのだ。かわいらしい妹のような彼女に、源太は包み終えた寿司の重箱をテーブルに置きながら告げた。
「料理ができるようになりたいんだったら、俺が手伝うぜ?」

* * *

 数日後、ことはをのぞく4人の侍たちと彦馬は、奥座敷に集まっていた。ことはは今日の夕食を作ると、午後の稽古後からはりきって厨房に篭っていた。
「本当に大丈夫なのか…?」
 彦馬が心配そうに呟く。普段のことはの行動を見ていれば、彦馬が心配するのも当然である。まして茉子の例があれば、尚のこと。
「まぁ、源太のお墨付きだから大丈夫だろう」
源太から「ことはちゃんの作った飯をちゃんと味わえよ!」と連絡を受けていた丈瑠は、静かに答えた。
「黒子さんたちも手伝ってくれるって言ってたし」
 茉子が丈瑠にひとこと付け加えたところで、ことはがひょっこりと顔を出した。
「おまたせして、すんまへん。どうぞ召し上がってください!」
 そういうと、黒子が食事を運んできた。ことはも自ら配膳につく。
 集った者たちは用意された料理を見て、目が点になった。料理そのものはけっして見た目の悪いものではなかったが、その献立が白飯に目玉焼きと付け合せのソーセージ、サラダ、漬物のみという、あまりにも簡素なものだったからである。白飯は炊飯器まかせ、サラダと漬物は切っただけ。メイン(だと思われる)の目玉焼きと付け合せのソーセージは辛うじて火を使ったといえるものの、ただフライパンにのせたらそれこそ放っておいてもできる代物である。もちろん味付けの問題もない。まるでどこかのビジネスホテルの朝食か、もしくは小学生の初めての調理実習メニューのようであった。

「あの、なんか……ごめんなさい」
 周りのがっかりとも苦笑ともとれない微妙な雰囲気を感じて、ことははしゅんと頭を垂れた。源太とともに決めたメニューは、それこそ料理初心者のことはでも充分作れる内容であった。作り方も、源太に小さなコツまで事細かに教えてもらっていた。おまけに普段食事の準備を担当している黒子達のフォローつきである。料理の出来に関してはことはは少なからず自信があったのだ。しかし、それを夕食に――それもひとしきり稽古を終えた食欲旺盛な男たちの夕食となると、さすがにもの足りないにもほどがあった。

「でもまぁ、とりあえず普通に食べられるし。っていうか、うまいよコレ」
すっかりしょげてしまったことはに気づいた千明が、慌ててあわてて目玉焼きに箸をつけた。半熟の黄身がとろりと溢れ、おいしそうな色を醸し出す。
 千明なりのフォローに、流ノ介もそうそうと箸をとりながら賛同する。
「これから少しずつレベルアップしていけばいいのだし」
 彦馬も料理を口にすると、初めてにしてはうまいもんじゃないかと頷く。
言葉こそ発しないものの丈瑠は黙々と食べつづけ、あっという間に白飯を平らげると黒子におかわりを要求する。
 それを見たことはは、ようやく表情が緩んだ。
そんなことはの様子に茉子は微笑むと、ことはの背をぽんぽんと撫でる。
「じゃあ、今度は私が教えてあげるね!」
 張り切る茉子の言葉に「ありがと、茉子ちゃん」とことはは笑顔で応え、男性陣の顔は一気に青ざめた。
「い、いや、ことはは源太が教えてくれるからいいんじゃないか?」
「そうそう、何事も最初は一人の先生についていた方が上達が早いというし」
「姐さんだって初心者のことはに教えるのは、きっと大変だと思うなぁ」
「きっと源太もかわいい弟子をとられるのは嫌だと思うぞ」
 冷や汗混じりにさりげなく諦めさせる言葉をかける彼らに「そうかなぁ、つまんないなー」と茉子はこぼし、ことははその光景をにこにこと見ていた。
 
 志葉家の夕食は、今夜もにぎやかだった。


--
ことははみんなに愛されているといいな。
初心者ことはも、源太に教われば恐いものなし…?
書いた後に気づいたのですが、茉子にあこがれていることはの言葉って、本編第七幕ででていましたね。
すっかりわすれていました…

第二十五幕で茉子の料理云々がでてくるみたいなので、慌てて更新しました(汗)



PR
ブログ内検索
夢小説設定
執恋二次創作のみ変換可。(Javascriptの未対応の携帯ではできません、ごめんなさい) お好きな名前を入力してください。 未入力の場合は『しゅん』になります。 あまり頻度は高くありませんが、瞬と混ざるのでお気をつけて(笑)
Template by Crow's nest 忍者ブログ [PR]